2021年7月26日、西表島がユネスコ世界遺産(世界自然遺産)に登録されることが決定しました。
2018年の登録延期勧告、2020年コロナウイルスによる審議中止を経て、3年遅れての登録決定です。
3年遅れたことにより、西表島ではガイド免許制度の開始やフィールドモニタリング方法検討など準備が進んだというメリットもありました。
しかし、まだまだ増加が予想される観光客の受け入れ態勢が整っていないのが現状。
幸いまだコロナ禍なので急激な観光客の増加はないと思うので、今後もさまざまな対策を早急に進めていくことが求められています。
ユネスコ世界自然遺産とは?
世界遺産は、国連の下部組織であるユネスコ(UNESCO)が「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)で定義しています。
地球と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引継がれている人類共通の宝物=遺産が順次登録されています。
世界遺産には「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」の3種類があり、今回西表島を含めた4地域が登録されたのは「自然遺産」です。
自然遺産は審査がとても厳しいことで有名。
富士山でさえ自然遺産で申請するも落選し、結果的に文化遺産で登録されています。
また、日本国内の世界自然遺産登録は、今回の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が最後となる見込みです。
日本国内の文化遺産(19件)
「富士山」や「白川郷」、「厳島神社」など2021年現在で19件が登録されています。沖縄県では「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が2000年に登録されています。
日本国内の自然遺産(5件)
- 屋久島(1993年)
- 白神山地(1993年)
- 知床(2005年)
- 小笠原諸島(2011年)
- 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(2021年)
奄美・沖縄の4地域併せて登録
今回登録された世界自然遺産の名称は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」です。長いですね(*‘∀‘)
全ての地域が「琉球弧」に含まれていますが、奄美大島と徳之島は鹿児島県、沖縄島北部と西表島は沖縄県であり、このような広い範囲が1つの世界自然遺産というのもちょっと不思議な気がします。
いずれの島も黒潮の潮流上にあり、亜熱帯海洋性気候でマングローブなどの熱帯植物が特徴的な地域です。
奄美大島
アマミノクロウサギやアマミトゲネズミ、ルリカケスなどが暮らす森。
徳之島
アマミノクロウサギやオビトカゲモドキなどが暮らす森。
沖縄島北部
沖縄島は、沖縄本島の正式名称です。ヤンバルクイナやノグチゲラ、ケナガネズミなどが暮らす森。
西表島
イリオモテヤマネコやカンムリワシ、セマルハコガメがなどが暮らす森。
西表島が世界遺産に登録された理由
キーワードは「生物多様性」。
それぞれの地域で、約1,200万年前~約200万年前におこった地殻変動や氷河期などによって島にやってきた希少な固有種が多数存在します。
これらの希少な生態系と生物多様性を未来まで保全するために、今回世界自然遺産に登録されたのです。
西表島で暮らし自然を案内しているガイドとして誇らしく思うとともに、この豊かな大自然を未来に残し伝えていくという大切な役割を改めて感じています。
西表島全域が世界自然遺産なの?
今回西表島で世界自然遺産に登録されたのは人が暮らさない地域で、およそ島全体の7割の地域です。
全て陸域で、海域は含まれておりません。
西表島のジャングルはだいたい世界遺産、と思って頂ければ大丈夫です。
世界自然遺産登録で西表島はどう変わる?
基本的には「変わらない」ようにコントロールすることが大切です。
登録前から西表島全域は国立自然公園に指定されており、その利用には厳しい規制が敷かれています。
「世界遺産に行ってみたい」というのは旅行好きな人なら誰でも思うもの。私も知床や小笠原諸島に行ってみたいと思っています!
そこで、極端に入域者が増えないように行政・民間が協力して準備をしています。
入域者数の制限
現状の入島者数(平均30万人/年)から10%増(3万人増)程度で抑える仕組みを構築中です。
しかし、コロナウイルス対策でよくわかったように、日本は国民の自由を尊重する傾向が強い国。民間セクションの自由な経済活動を規制することは難しいようです。
西表島で観光業を小さく営む人々は、ビジネスより暮らし・自然を大切にする傾向にあります。大手旅行代理店などに抑制が求められています。
ガイド免許制の導入
西表島では2020年より「竹富町観光案内人条例」が施行され、ガイド免許を持つ者のみが自然環境のガイドを行う仕組みが確立しています。
ガイドツアーをお申し込みの際は、必ず事業者がガイド免許を取得しているか確認しましょう。
入域料創設
将来的に入域料(入島料)の徴収を検討しています。
世界遺産・西表島の楽しみ方
まだまだコロナウイルスとの闘いの日々が続いています。西表島が世界自然遺産に登録され、ぜひ行ってみたい!と思う方も多いかもしれません。
今回の世界自然遺産登録で、西表島の自然はより保護される方向に動きます。ですので、いつきても自然は元気な姿を見せてくれます。
いろいろ落ち着いてから、ぜひゆっくり大自然を感じにいらしてください。
ゴールデンウィークや夏休みなどは混雑が予想されるので、落ち着いたシーズンがおすすめです。亜熱帯性海洋気候の西表島は、通年カヤックやトレッキングといったアクティビティが楽しめますよ。